2022年。あっという間に1/4が終わりました。
2022年はとにかく値上げの年。
今回は「ちいさなパン屋と仕入れの話」をしようかなと思います。
- パン屋さんになりたいけど、実際仕入れとかどうしているの?
- パン屋さんの維持費ってどんなものがかかるの?
- 価格改定するタイミングはどうしてる?
などちいさな規模でパン屋さんやお菓子屋さんになりたい方向けにまとめてみました。
具体的な部分はひとまず置いて、今回は“仕入れの基本“に関してまとめてみたいと思います。
今年は値上げラッシュ!
2022年。
コロナの影響に加え、インフレへの懸念、ロシアウクライナ情勢など変化のある年となっています。
国産小麦粉を使っているので直接的な影響はないものの、外国産小麦の大半がロシアからの輸入ということもあり他人事ではないという印象を持っています。
また毎年4月は何かしらの値上げがある時期。
4月を乗り越えても7月にまた値上げがありそうな雰囲気ですよね。
ざっと値上げしたものの例はコチラです。
まさに“直結!!“という感じですね。
小麦粉などのパンの材料になるものはもちろん、半導体の影響でオーブンや給湯器などは値上げだけでなく仕入れも困難になっています。
そこに加えて電気代やガス代などの光熱費がじわじわと値上げ。
ガソリン代も世界情勢に連動しており、最近は価格が上がっています。
ガソリン代の高騰が続くと送料にも今後影響が懸念されます。(だいぶ死活問題!)
パン屋さんだから原材料だけを考えていればいいわけではなく、パンと直結しない隠れた維持費が結構あるのです。
しかもちいさなパン屋は全体的にミニマムなのでその維持費がチクチク影響してきます。
見えない維持費というのはこんな感じ。
『パン』だけ着目していると気づくことのできない“ザ・維持費“ですね。
店舗を借りているならさらに家賃が、人を雇っているのであれば人件費ものしかかります。
「パンを販売して得た売上から維持費を含めて支出をする」
活動を続けていく上で避けては通れない部分に値上げは直結してきます。
飲食と原価率の話
ではここで“原価率“について考えてみましょう。
- 原価率:『販売価格のうち原価が占める割合のことで、原価を販売価格で割ったもの』
- 原価:『商品やサービスを制作するのにかかった元の費用』
簡単な数字で例えると
1000円のランチの原材料費(原価)が300円なら原価率は30%。
200円のパンの原材料費(原価)が40円なら原価率は20%。
ただこれはあくまで原価の話。ここに加えて維持費のことも考えなければなりません。
販売価格が低いほど、薄利多売になるので数を売る必要があります。
飲食でポイントになるのは『食品ロス』。
スーパーなどで大量に販売している惣菜などは毎日必ず完売するとは限りません。
ある程度の食品のロスを想定しなければなりません。
でも個人ではそうもうまいこと回せるわけではない。
かといって販売する個数を少なく設定すると売れる数の限界が早い。
- 売上優先で大量に用意して、食品ロスを覚悟する
- 食品ロスのリスクを考えて、売上に限界をもたせる
のかはお店により異なります。
わたしのパン工房ではかなり“後者“寄りの考え方。
食品ロスは環境にも良くないので、基本的には受注生産にしたい。
イベントなども自分の焼ける限界の数×90%くらいの個数に設定していました。
経験上、欲を出すとロクなことがないタイプ(笑)
数個のパンであれば自分で食べたり人にあげることもできますが、それが何十個ともなると精神的にも資金的にもかなり辛い。
なるべく焼き立てを持っていきたいからこそ、前日焼成はできる限りなくしたい。
大きなイベントで12時起きだとしてもちいさなオーブン一つではせいぜい焼けても500個。
自分の体力と、売上と、精神面と。
天秤にかけるのは楽しさの裏側にある苦悩ってやつでしょうか。
さて、それでは先ほどのランチの例で仕入れに変化があった時のことを想定してみましょう。
飲食の原価率の目安は食品ロスを考えて30%くらいと言われています。
- 1000円のランチで原価が300円だとしたら、原価率30%。
- 仕入れの価格が高騰するなどして350円になると原価率は35%。
ここに維持費の値上げも重なるとさらに追い詰められます。
50円というのはかなり大きいダメージ。
1000円からみて50円は5%。5%って聞くと大きい。
原材料だけで考えるなら調整は仕入れの産地やお店になります。
これまで地元野菜を使っていたのを、安い野菜にするとか小麦粉を国産から外国産にするとか方法はありますが、間違いなく味が変わります。
味が変わるというのは自分のブラント力の変化を意味します。
プラスに転がるのか、マイナスに転がるのかはもはや賭け。
だから出来れば変えずにいきたいところですよね。
では原材料ではなくテイクアウトの容器が値上がりするとどうなるでしょうか。
原価率は30%を維持するけれど、容器が20円値上げ。
容器が値上げすると大体ビニール袋なども連鎖的に値上げしています。
こういったものの積み重ねはジワジワと効いてくる。
原価率に含めるという考え方をするにしても結果的に負担は増えることになります。
店舗の場合は原価・光熱費に加えて、人件費なども考えなければなりません。
わたしのように個人で運営している場合は人件費の部分が出てこないので、維持費に費用を回すことは可能。
それでもやはり負担が増えるほど、新しいことに回せる費用が減るのでうまくバランスを取るべきだと考えます。
イベント出店のみでの活動されているパン屋さん、お菓子屋さんは30–40%くらいの原価率で商品を作られている多い印象です。
材料にこだわって50%になる商品が出ることもしばしば。商品のバリエーションでバランスを取ります。
“パンは膨らむけれど、タルトは膨らまない。“
お菓子屋さんは総じて原価率が高いイメージです。
パンほど賞味期限がギリギリではない、という面ではプラスの要因もありますが負担が大きいのはなかなか大変なものです。
お給料、としての概念がないため“作ることが好き“じゃないと続けることは難しいなーとは常に思っています。
ちいさなパン屋と仕入れ
パン屋さんでもいろいろな活動方法があります。
- 店舗を持つパン屋さん
- 移動販売しているパン屋さん
- 自宅工房で月に何回かパン販売をしているパン屋さん
- 受注生産メインで活動しているパン屋さん
販売する日数が多いほど、仕入れの数も多くなります。
定期的な販売があるなら卸や仕入れサイトの定期販売などを利用。
受注生産メインのわたしの場合の仕入先は主に”富澤商店”と“スーパー“、あとは“地元のグリーンセンター“を利用しています。
”富澤商店”は発送が早く、送料無料の価格も5980円以上と比較的手を出しやすいので月に数回利用しています。
スーパーはなるべく地産地消の商品を扱っているところを選びます。
グリーンセンターはまさに地産地消。野菜などは新鮮で美味しい。
店舗ほど毎日数を焼く、というわけでもないのである程度の期間で区切ることで都度購入という形をとるようにしています。
これについてはまた別で記事にする予定です。
自分の活動の仕方に応じて選ぶといいかなと思います。
わたしのような受注生産タイプのちいさなパン屋はその都度、コンパクトに仕入れをするというのが現状です。
価格改定を考えるタイミング
- 原価率も計算した
- 維持費も考えた
- 工房も完成した
- 許可も通った
よっしゃ始めるぜ!
で、始めたけれど続けるにつれ値上げが重なってくるとどうしてもスタート時とは状況が変わるもの。
ここで価格改定を考えるわけですが、価格改定を頻発するのはよろしくありません。
価格改定はこんなタイミングの時に考えてみましょう。
- 原材料の値上げが重なっている時
- 周りの飲食店の価格改定がある時
- 消費税の改定の時
- 年の変わり目、年度の変わり目、季節の変わり目
「なんとか、なんとか現状維持!」と粘りすぎて活動を維持できなくなったら本末転倒。
無理なら無理で直近の変わり目に照準を絞って決断します。
“1月・4月・9月“などなんとなく変わり目のイメージのある月なんかはポイントです。
しかしながらむやみやたらに価格改定をするのはお勧めしません。
- 消耗品などの仕入れの工夫
- 送料の支払い方法の工夫
- サブスクなどの見直し
- 月払いから年払いにしてみる
など、まず自分が今すぐに取り掛かれそうなことをやってみて続けられるレベルであれば採用。やり尽くした、とか無理なのが目に見えているのなら価格改定をします。
一旦粘ってみると無駄も見つけることが出来て一石二鳥。
定期的に原価率や消耗品などの仕入れ先を見直すことをオススメします。
今回のまとめ
今回は「ちいさなパン屋と仕入れの話」についてまとめました。
現状維持、というのはなかなか難しいものでわたしのパン工房でもこの春から送料の改定を行いました。国産の小麦粉も最近値上げがあり、気を抜くことが出来ません。
商品に応じて価格の微調整をおこなっています。
まだまだ値上げが続くことが予想されます。
メニューも仕入れに合わせて微調整をしつつ、出来る限りお客さんの目線に立ちながら価格設定を行なっていきたいと思います。
今後送料についてや、イベント出店なとに関しても動画にしたいなと思っています。
作家活動にヒントになれば幸いです。