世の中にはたくさんのパン屋さんがあります。
クロワッサン専門店もあれば、サンドイッチ専門店もある。
高級食パンのお店もあれば、ベーグル屋さんもある。
形は本当にそれぞれ。
そんな中、わたしは「シンプルぱん」がメイン。
なぜわたしがシンプルぱんを選んだのか。
今回はその理由についてお話していきます。
今からパン屋さんを始めたい方の”コンセプト決め”の参考になれば嬉しいです。
家族みんなで食べることが出来る
パンは何かと悪者にされます。
小麦はグルテンが入っているからとか日本人の体質には合わないとか。
そんなのはパン屋さんみんな自覚しています。
でもみんなが食べたいと思うからパン屋さんは存在しているし、パン屋さんは成り立っている。
いつもはパンを食べないようにしていても、たまにのご褒美なら食べようかなとなりますよね。
個人的にはそのくらいの存在でいいなと考えています。
で、せっかく買ったなら家族みんなで選べるパンがいい。
わたしのパンの主なお客さんの層は20-60代の女性。
いわゆる”主婦層”です。
赤ちゃんがいるご家庭もあれば、歯がちょっと悪くなったおばあちゃんのいるご家庭もある。
食べ盛りの学生がいるご家庭もある。
さまざまな家族に「あ!あのパンがあるじゃん!」と思われる存在。
そんな存在を目指しています。
なぜこんなに家族にこだわるのかって?
それはわたしが小さい頃から”家族愛”に飢えていたから。
常々お話ししていますが、ちょっと複雑な家庭で育ちました。
家に住む家族全員が揃って”笑顔で”ご飯…という風景を経験したことがないのです。
同じ家にいるのにバラバラ。
だから家族の会話の1つのきっかけになれる誰でも食べることの出来るシンプルなパンを焼きたい。
とはいえ我が家ではすでにその段階は終わっております。
「今日は出勤だからパンよろしくー」とか「えー今日そのパンしかないの?」とかクレームをよく食らいます。
”あって当然のパン”だから仕方ないか。
でもでも会話のきっかけにはなってますよっw
そんなこんなで「会話のきっかけになるパン」が1つめの理由でした。
自分の食べるパンを焼きたい
2つ目の理由は「わたしが卵アレルギー」ということ。
生まれながらの卵アレルギーではありません。
妊娠をきっかけにアレルギー体質になり、花粉症と卵アレルギーを発症。
ストレスなどと重なり、最終的にはとんかつのつなぎでノックアウト。
症状としては「胃腸症状」が主です。
よく聞く「腫れて気道を圧迫してしまう」というものではなく、上から下からダーーっと出て、血圧が下がります。
アナフィラキシーショックというやつですね。
ちなみにとても不思議なのですが、血液検査での卵アレルギーの項目は全て陰性。
検査上、卵アレルギーではないのです。
しかし医師目線だと「症状が出てるならそれはアレルギー」とのこと。
大人になってからのアレルギー。基本的には治りません。
治療法は1つ。
『卵を食べるな』です。
話を本題に戻しましょう。
自然派系のパン屋さんは除きますが、大抵のパン屋さんの生地には卵が入っています。
だから食べることが出来ないのです。
美味しそうなクロワッサンも食べれません。
大好きなクイニーアマンも卵が入ってます。
んじゃ自分で焼くわ!
というのが今わたしが焼いている理由です。
卵アレルギーの生活はとても不便。
でもアレルギーがあるからこそ、アレルギーを持つお客さんの気持ちが分かります。
これはね、アレルギーじゃないと共感できない(ドヤ)。
…なぜ今ドヤったかは分かりませんw
そして元々アレルギー持ちではなかったからこそ、卵の美味しさもよーーーく知っています。
パンにとって卵は「生地のコク」を出します。
それに負けないくらいもちもちにしたるわ!
シンプルでもちもちのパンを焼いているというわけ。
ある種の反骨精神と、物理的に食べることが出来ない悔しさが合わさると無駄に力を発揮するんですねぇ。
というわけで2つ目の理由は「卵アレルギーの自分が食べるパンが欲しい」でした。
毎日食べたくなるパンを焼きたい
これはタイトル通り。
「1回きりのご褒美ではなく、日常の一部に」
普段の生活に普通に存在するようなパンでありたい。
これはここまで出てきた2つの項目に通ずるものですよね。
家族の会話のきっかけになったり、卵アレルギーの自分のために焼いてみたり。
コテコテしたパンを毎日はいらない。
たまたま”美味しいな”と思える調味料に出会い、それらを使って焼いてみたらもちもちしたシンプルなパンが焼けた。
同じ要領で少しずつ生地のバリエーションを増やしたらそれなりの数になってきた。
現在は定番のメニューだけで20種類ほど。
オイルを変えただけで、水を牛乳に変えただけで、強力粉を準強力粉に変えただけでたくさんの種類のシンプルぱんに出会えました。
1つのセット数を4つにしているのはよくある家庭の人数が4人家族が多いから。
もちろん焼ける数のキリがいいのもあります。
朝ごはんでもいいし、おやつでもいいし、お昼ごはんでもいい。
そんな日常のあらゆる場面で「あ、あのパン食べよ」となってくれるのがわたしの何よりの喜びでもあります。
これが3つ目の理由です。
あえて何もないのがいい
最後は「シンプル イズ ベスト」。
わたしはもともと片づけられない人間でした。
というか欲張りな人間でした。
あれもこれもやりたいし、やるからにはこの中で1番になりたい。
1番偉いポジションでいたいんだーなんて思っていました。
それが年齢とともに少しずつ変化してきて「自分と周りが幸せになること」に重点を置き始めた。
ミニマリストのような考え方になってきたんです。
どうでしょう、それに気づいたのは多分30歳ごろ。
一番いろいろと疲れていた時期だったように思います。
こども園の保護者の会長をやっていたし、仕事は主催イベントが始まり、パン教室も継続。
そのころは夫の出張が多く、ほぼワンオペ。
忙しくてここでようやく「何かを手放そう」と思えた。
で、徐々に動いてきて今はパン屋系YouTuber。
パンのメニューに関しても似た動きをしています。
これはパン販売を始めた初期。
うざいほどコテコテに装飾をしています。
テーマを決めたら一直線。……ダサいw
そしてこちらがカッコつけてた時期。
雑貨屋さんに間違われるほど装飾していました。
コレはコレで好きだけど、パン屋の清潔さはないw
少しずつパン屋さんぽくなってくると共にメニューも少しずつシンプルになってきました。
シンプルを意識し始めてガラっと変わりました。
でも出店で”シンプルなパン”ってあまり売れないんです。
自分で決めた方向性なのに出店して売れないのは宣伝不足でもあるし、単に実力不足でしょう。
「日常のご褒美として買い物に来る」というイベントは、わたしのパンのコンセプトから離れ始めているなと感じたのはこの頃。
それだけではない理由でしたが、このタイミングで出店も主催も卒業。
ネットショップに照準を絞っての今に至っています。
自分の考え方はパンにも生き方にも表れているんですね。
こうやってまとめていて改めてそう思いました。
今回のまとめ
今回は「あえてシンプルぱんを焼いている理由」をお話しました。
最後にポイントをまとめておきましょう。
パン屋さんを始める時はコンセプトを決めますよね。
何事も始める時はテーマを決めます。
わたしにはそのコンセプトが当時ありませんでした。
なぜなら「完全にノリでスタートしたから」。
パン屋として活動をして10年になりますが、最初の数年は本当にグラグラ。
今画像を見返してみても何がしたいか全然分かりません。
明らかな分岐点はイベント主催をしたこと。
自分たちの主催するイベントに合うような雰囲気にしたいから、ガラッと全ての小物を変えました。
次はカッコつけることに集中しすぎて脱線。
その次はネットショップに集中しすぎて意識ここにあらず。
で、今に至ります。
経験して、失敗して、また経験して、微調整。
今の感じでずっといるつもりもありません。
どこかのタイミングでパン屋を手放すことを考えているし、やってみたいことをもっとやれる環境にするため少しずつ動き始めているところです。
「キラキラ活動しているように見える」とよく言われますが、まさにそれは”隣の芝生は青い”ってやつ。
こちらからみたら周りみんなが羨ましいです。
ぜーんぜん満足なんてしていません。
なのでね。一緒にいろんなこと挑戦しましょう!
コミュ障が何言ってんだって話ですがw、動画やブログを見て「こいつも頑張ってんなー」と思っていただけたら幸いですw