このサイトでは一貫して”パン屋目線”のお話をしています。
パンを販売するための許可である『菓子製造業許可』はお菓子やケーキの販売にも適用されています。
「パン屋はお菓子やケーキの販売はできますか?」という質問があったのでお答えしていきます。
結論、出来ます。
ただし注意することもあるので、そのあたりを今回解説していきます。
許可の範囲を知っておこう
過去にも解説はしていますが、改めて許可の範囲や定義について知っておきましょう。
厚生労働省の「営業許可業種の解説」という資料を引用します。
なお、以前は喫茶店許可がありましたが2021年の法改正により撤廃。菓子製造業許可の範囲が少し広がっています。
では許可について解説していきます。
飲食店営業許可
…うむ。こういう資料はどうしてこうもまどろっこしいのだろうか。
要は「その場で調理して、その場で食べるものはこの許可ね」ということ。2021年の食品衛生法改正により、喫茶店許可は飲食店営業の一形態として統合されました。
菓子製造業許可
またごちゃごちゃ書いてあるのでまとめましょう。
- お菓子、サンドイッチ製造がOKになったよ
- ちょっとした飲み物なら提供してもOK
まぁこんなフランクに書けとはいいませんが、とりあえずお堅いところの資料は分かりにくい…。ここまでが厚生労働省の資料でした。
さて、ここから分かるのは「お菓子とケーキ、パンは菓子製造業で販売可能」ということ。
『結局出来るんかい!』と思ったかもしれませんが、裏付けも含めて理解しておくことは大切ですよ。
絶妙なラインにいるのが”アイシングクッキー”なんですが。法改正により焼き上げ後の調理も制限がなくなっているのでよっぽど大丈夫かと思います。不安があれば管轄の保健所に問い合わせてみてください。結構地域差があるので、聞くのが一番早くて正確です。
長期保存は強い味方
パン販売とお菓子販売。
許可は同じところに区分されますが、販売の準備をしていると明らかに違う点があります。
ざっと書き出してみましょう。
どうでしょう。お互いの得意と苦手を補っていませんか?
パンはいくら頑張ってもオーブンの大きさで焼ける限界数が決まります。クッキーは長期保存可能ですから、何日かかけて焼き上げが出来る。
パンはご飯になり得るからメニューが豊富。ケーキは長持ちはしないけれど、特別な日にみんなが買いに来るもの。
そうなると数を販売したくなってきます。が、ここで注意。
お菓子とケーキとパンの3刀流は相当難しい!
1つにしろとはいいませんが、全てを出店で持っていくのはかなり大変。
以前も記事にしましたが、身の丈にあった量を焼くようにしてくださいね。
わたしを例に出します。
とある日の出店の割合です。
パンが一番得意なので最終的にはパンのおともになるもので統一していました。かなり前にはクッキーなども焼いていたんですが、なんせわたしお菓子作りが苦手みたい(ちなみに料理はとても苦手。パン屋だからって料理出来るわけではないんですよw)。
単にパンを焼く仕組みとか、違う部分に惚れ込んだだけ。結局のところ、わたしに関しては長期保存出来るメニューはグラノーラのみ。
スコーンは前日に焼き上げた方がしっとりしていて美味しかったのでそうしていました。この辺りのバランスも含めてお菓子をメニューに入れるかを考えましょう。
「パン屋です!」と謳うならお菓子はサブとして。「お菓子屋です!」でパンが横にあるのはちょっと不自然。
このバランス、実は難しいかもしれません。
衛生管理はより気を遣おう
衛生管理については常々お伝えしていますが、ここでは温度管理についてお話していきます。
今からお話しする内容は実話。
お友達のお菓子屋さんそれぞれの主張です。プリンやアイスクッキーなどを販売していた時。
とあるお菓子屋さんはかなり念押し、もう1つのお菓子屋さんはざっくりした説明をしていました。
どちらも”冷やす”ことに関して似たように伝えていた気がします。
が、2人のこだわりを聞いているとちょっとだけ考えが違ったようでした。
プリンの方のお菓子屋さんはあまり冷蔵を主張したくない、アイスクッキーの方のお菓子屋さんは冷やしていればいけるかなというニュアンス。
どちらの委託販売も経験したことがあるんですが、同じように冷えた食品を販売しているのに結構考え方が違うんだなぁと思ったものです。
これ、どちらが正解とかではありません。要は衛生管理に関する捉え方です。
同じイベント出店をするのでも、季節も違えば天気も違います。
今お話ししたように作り手感でも考えは違います。
個人的には「保冷剤は冷蔵庫ではないな」と思ったので、プリンを販売していたお菓子屋さんの意見に近いです。
どちらにしても衛生管理は慎重にいきたいものですね。
食品表示はしっかりと
食品表示についても以前解説しています。
ここでお伝えするのは「誰が見ているかわからないから常に緊張感を」ということ。
小さなパン屋さんをしているとイベントなどでパン屋さんになりたい方などに声をかけられます。
これがね、結構ズカズカと踏み込んでくるんですよw
イベント出店時に聞くことかいな!と思いつつ、のらりくらり交わした経験があります。
ある意味まだ自分を目標地点にしてくれる人ならいいんですが、本当に稀に「許可狩り」みたいな意地悪な人もいました。
悔しさなのか憂さ晴らしなのか知りませんが一言一言トゲがある人もいましたねぇ。そして中には稀ですが無許可で販売している人もいます。噂が噂を呼び、保健所に通報された方もいました。
どこで誰が見ているか分からないんです。常に緊張感を持って準備をしましょう。
ちなみにイベント主催になると消防の許可なども関係してきます。強風でタープが飛ばされて怪我をしたとかがあるとイベント保険に入っておいてよかったーと思うことも。
誰でも初心者の時期はあるものなんですが、先に経験している人に聞いておくといいですね。このコンテンツも”経験者の話”と思って楽しんでいただくと意外と使い物になるかもしれませんw
今回のまとめ
今回は「パン屋さんはお菓子やケーキを販売できるの?」ということで許可の違いや注意点等を解説してきました。
最後にポイントをまとめておきましょう。
途中でアイシングクッキーについて触れました。
2021年の食品衛生法より、菓子製造業許可の範囲が広がったので現在の感じであれば調理後のクッキーに手を加えることはおそらく許可の範囲内と認定されるかと思います。
ただわたしが工房を取得した頃はまだ法改正がなく、結構皆さんグレーゾーンの中活動をされていました。
「アイシングクッキーの体験ならいいかな?」など試行錯誤されていたように記憶しています。
アイシングクッキーの中には卵白を使っていることがあります。専用の材料なら加熱されているのでよっぽどいいんですが、生の卵白だったりするとサルモネラ菌のリスクもあります。
飲食ってキラキラした世界に見えますよね。実は結構リスクと隣り合わせでもあります。
自ら学んで、知識で対策して、行動に移して対策をしていきましょう。
そのお手伝いが出来たらいいなと思っています。