以前「パン屋になるための5ステップ」という記事を更新しました。
今回はそこでご紹介した「STEP1:おうちパン屋体験」を掘り下げていきます。
というのも「いつかはパン屋を始めたいけれどお金のこともあるし今すぐは無理…」という人は多いですが、「体験」なら今からでも出来ますよね。
夢を夢で終わらせないためには小さなことからでいいから行動してみることが大切。
パン屋さんといえば利益を出すためにある程度の数を焼く必要があります。
「パンの大量生産」はいきなりできるものはない。
なら……今から練習を始めてしまえばいいのです。
やってみて辛すぎるなら、今気づけてよかったと思えばいい。
やってみて「楽しい!出来そう!」なら、夢を目標に変えて積み上げていけばいい。
まずは行動あるのみ。今すぐに出来る“おうちパン屋体験“。やってみてください。
基本の生地を見つけよう
まず、何個焼くか?という話からしていきましょう。
以前アンケートをとったところ、家で焼いた一番多い数は「20個以下」の方が多かったんです。
さて、20個でパン屋をやったらどうなるでしょう?
…正解!赤字街道まっしぐら!
今回は一旦目標を50個にして考えていきます。
で、50個だからいろんな生地を仕込みたくなりますが……ノンノン。それはやめておきましょう。
コツは『ベースの生地を増やしすぎない』こと。
いくつか理由があるのですが「大変になる」からが一番。
チェーン店のパン屋さんを見てみてください。
焼き上がったパンはたくさんの種類がありますよね。
あれ、全部違う生地だと思いますか?
答えは“ノー“。
むしろベースの生地はほぼ同じです。
冷凍された生地を使用していることも多いんですよ。
デニッシュ生地などは別仕込みになりますが、基本的には1つの生地をどれだけアレンジ出来るか。
「えー!そんなの邪道じゃん!」と思うかもしれません。
そんな方は一度10種類のパンを全て生地を変えて焼いてみましょう。
めっっっっちゃ大変だと思います。
「この生地は強力粉8、準強力粉2。」
「この生地は水の量が少なめで、粉の配分は…」
たぶん毎日発狂するのではないかとw
適度にゆるく構成するくらいでないと、特に出店の日は朝は戦争ですから。
『持続可能なメニュー構成』を考えなければ、細く長く続けられるパン屋にはなれない。
辛い、大変、めんどくさい……こんなことを言ってる職人の焼くパン、美味しいですかね?
こだわりは大切ですが、度を超えるとストレス。だからこそ、軸となる生地をじっくり見つけていきましょう。
ちなみにわたしのベース生地はバターや卵を使わず、マカダミアナッツオイルを中心に構成しています。
“卵アレルギーの自分用のパン“が裏テーマ。そんな風に軸を考えてみるとじわじわ見つけられると思います。
仕込みを増やすと起きること
一般的なレシピ本の分量といえば6-8個程度。粉の量でいうと250-300g程度でしょうか。
さすがにそれではただパンを焼くだけなのでまずは倍の量で考えてみます。
仮に600gとします。
自宅にホームベーカリーがあるとします。多くのホームベーカリーの粉の最大量は300g程度(以前持っていたシロカのホームベーカリーは容量が大きかったと記憶しています)。
つまり、特定の機械でないと一度に600gの粉を仕込むことはできません。
この場合500gと100gで分けて仕込むのは変。300gを2回に分けて仕込みますね。
同じように20-25個程度焼くにはさらに倍だから、300gを4回仕込むことになります。
これが全く同じ生地ならいいのですが、例えば基本の生地とフォカッチャの生地なら配合などが変わりますよね。
粉が違ったり、オイルが違ったり。水の量も違うかもしれない。
砂糖ではなくはちみつを使うこともある。
そう。仕込みが増えるほどに脳みそはフル回転。
アレルギーのことを考えて生地に牛乳を使うなら後回しになるだろうし、ココアを入れた生地の次にノーマルな生地はちょっと違う。
生地の配合が変わると仕込みの順も変わってくるよね。
イベント出店で200個焼くとしましょう。
わたしは普段600g(平均12個)を一単位として仕込みます。
200個というと仕込み単位は200÷12=16。
ボウルを16個並べて、計量して仕込む。
脳内はもうエラいことになっています。
こんな感じで焼きたい量に合わせて仕込みの忙しさはもちろん変わります。
最初は無理せずじわじわ増やしてみてください。
発酵の渋滞を防ぐ方法
仕込みはまぁいいんです。焼ける量を仕込めばいい。
問題は発酵の工程。
普段300gの粉で6-8個焼く場合、オーブンはどんな具合でしょうか?
大きめの天板なら1段で焼けるかもしれませんし、小さめの正方形の天板なら2段で焼きます。
1.2回焼く程度ならそこまで影響はありません。
が、先ほど出てきたイベント出店で16回の仕込みをしていた場合はどうでしょうか。
「よし、ちょっと置いておこう」から1時間待つ生地も出てきますよね。
そうなると気になるのは過発酵。
成形前はまだいいのです。
成形して発酵したあとの焼くときの待機時間は過発酵を招く。
天然酵母であれ、冷蔵発酵であれ、成形してからは基本的にスムーズに焼き上げまでいきたいところ。
対策としてはこんな感じ。
焼き上げる予定のパンそれぞれで発酵時間が変わってくるかと思います。
これを頭の中でパズルを組み合わせるかのように考えていくのです。
なおわたしこの作業が大好きでして、実は過去に1本記事にしております。
怖いのは夏。常温ですらすでに最適な発酵温度なこともあるので、一度出したらもう止まれないことは重々承知の上で作業を開始しましょう。
冬は乾燥が敵。
布をかけてみたり、霧吹きを使ったり、カバー的なものをしてみたりいい感じの湿度になるよう練習しましょう。
人によっては「えーー」と思うかもしれませんが、お風呂場って実は大きな発酵器になります。
お湯を沸かして、暖房をつけるとメロンぱんには最適な環境。
あとは気持ちの問題だから、やってみたい方だけ挑戦してみてね。
作業しやすい生地の種類で焼く
最初に戻りますが、生地のバリエーションは増やせばいいというものではありません。
イベント出店ならメロンパンだけでも30個とか焼いていくのでいいのですが、これがネットショップ運営になると様子が随分と変わります。
わたしを例に出しましょう。
ネットショップは基本受注生産の形をとっています。
1セットは同じパンが4個。
なのでこんな風に注文が入ります。
- 豆乳しろぱん1セット
- メロンぱん1セット
- しっとりスコーン(チョコ)1セット
- フォカッチャ1セット
「おっつ……(生地全部違うやん)」と内心思いつつ、4種類の生地を仕込むといった感じ。
ときどき基本の生地が全て共通なパンのご注文もありまして、そのときはちょっと楽をさせてもらう感じですね。
とはいえ、すごく不思議なのですが……1回の仕込みで何種類もパンを焼こうとするとどれか1つは大抵焼き上げが変なんです。
- 例えば基本の生地(牛乳ベース)で
- メロンぱん
- プチぱん
- あんぱん
- しろぱん と同じ生地で焼けたりしますよね。
600gの仕込みで3つずつ成形をして順番に焼いていくと、熱伝導がいつもと違うからかプチぱんがいびつになる。
多少ならまだしも「ないな」のレベルだと単純にロスってしまいますよね。
最小の仕込み単位を決めて、キリよく焼くのを推奨します。
またネットショップは毎日何十件と注文が入るわけでもないので、多少生地の種類が増えてもよっぽど大丈夫。
ただ自分の脳が混乱しない程度の生地のバリエーションにしておくと、ミスも減るかなとは思います。
ご自身が扱いやすいようにルーティーンを作っていくと少しずつ焼く量も増えて、作業もしやすい。
焼いたパンは冷凍しておいてもいいのでぜひ何度か試してみてください。
今回のまとめ
今回は「【夢のパン屋開業】おうちパン屋体験・実践編」ということで書籍や過去の動画でお伝えした”パン屋体験”を具体的に解説しました。
ポイントは4つ。
”お客さんを喜ばせたい。いろんなパンを用意して、たくさん買ってもらいたい。”
その気持ちはとてもとても大切。
でも人を喜ばせる前に一番大切なことは……「自分にゆとりをもたせてあげる」。
人間というものは欲深い生き物。どうしても前のめりになると”あれもこれも”となりがち。
何度も経験してきました。
経験しているのに、一生懸命になると反省すら忘れてしまうんですよね。
『夢に向かう前にまず自分を知る』
パン屋体験をして、自分の本当の気持ちを感じてみましょう。
もちろん楽しかったなら、どんどん焼いてみてください。
夢を夢で終わらせないために1つずつ行動していきましょう!