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パン屋の話

福袋販売、4年続けて気づいたこと

少し前までパン屋としては冬休みをいただいておりました。といっても今年は風邪を引いちゃいましてね。声を失い、その後もなかなか改善されず。

ほぼ家にいたこともあり作業が大いに進みました。良いんだか、悪いんだか。

今回は冬休み中に唯一ある大きなイベント、「福袋販売」について。

これまで4年ほど販売をしてきてなんとなく掴めた部分があったので、共有しようかなと。

一言でまとめると「ここでケチるな」です。

ぜひご自身の販売にも活かしてみてください。

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やっぱり安いって神!

2024年のキーワードといえば「インフレ」ですよね。

円安の影響だけでなく、その他の要因ですべてのモノの価格が上昇しました。

中でも食品はなかなかに値上げしていますね。特にチョコレートなんかはカカオの輸入が高騰しており、かなりドンと値上がりしました。

チョコレートは今後しばらく価格が高いことが予想されます。

なんでもカカオの木がダメになってしまったようで、新しい木を植えても出荷できるまでは何年もかかる。

しばらくパン屋さんやお菓子屋さんには辛い時期が続きそうです。

で、そんな中福袋の販売をするわけですよ。

わたしは3年前から西暦に合わせた価格の福袋を販売しています。つまり今年であれば「2025円」での販売。去年より1円の値上げです。

インフレ率には到底見合わない値上げですが、一大イベントですからそこは頑張っております。

内容量は14個。普段わたしのパンの平均価格は200-210円

普通に販売したら2800円前後のところをあえての「2025円」で販売する感じ。

おみみちゃん

正直……キツいですw

でも買い手側に立って考えてみましょう。

パンを買ってみたかったけれど、手を出せなかった方が福袋をきっかけにリピーターになることもある。

長い目で見ればそれは先行投資なんですよね。しかもこのご時世です。なるべく安く買えるに越したことはない。

もちろん福袋のときだけ購入してくださる方もいます。

そういう方は「思い出してくれてありがとう」と思うようにしています。

お店側としてはもちろんリピーターが増えることを望んでいるわけですが、ここはひとつ寛容に考えましょう。

やっぱりね、「安いって神」なんです。

工夫の仕方によってはこちらも上手に在庫を捌くこともできますので、ここからはその目線に立って考えていきましょう。

キツい日程は組まない

早速福袋販売のコツにいきたいところなのですが、まずは注意事項もお伝えしておきましょう。

「キツい日程は組まない」

「福袋販売を乱用しない」

今年のわたしの冬休みの日程をまとめていきましょう。

まず12月中の予定です。

  • 12/20 年内最後の定期販売
  • 12/20 年内の注文受付終了
  • 12/25までに発送を完了させる
  • 12/26-1/5までは完全なお休み

そして1月に入ってからの予定。

  • 1/5 福袋販売(約50セット)
  • 1/10 1月の定期販売
  • 1/13までに福袋発送完了目標
  • 1/13 ショップ再開

ネットショップをはじめて2年ほどはガッツリ冬休みも注文を受け付けていました。

特に1年目はちょうど軌道に乗りそうな時期。ここは波を止めるより漂わせることを選択。

2年目はある程度軌道は乗っていたものの止め方がわからないというか、止める恐怖に負けて1年間ショップをほぼ開けていた感じでした。

おみみちゃん

ありがたいことにめちゃめちゃ忙しい。

仕入れもしなきゃいけないし、焼き上げもあるし、発送もある。

家族は冬休みなのにひとり慌ただしい。

「なんのために働いているのだ?」となり、その翌年からはしっかり年末年始は休むことに。

もちろん流れを止める不安や恐怖はありました。でも3年目となるとある程度リピーターがついていたので、なんとかなるだろうという気持ちが芽生えていたのもあります。個人的には長期連休ほどパンから離れてパンを焼く楽しみを温存させるのがいいと考えています。

実際、今年の年始の焼き上げは楽しかったです。

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最近は定期販売の日程を先に1年分出すようにしています。

おおよそ第2・第4金曜日を固定。大型連休(GWやお盆)などはどうしても注文が減るので、そこを避けるように組み立てるとなぜか第2・第4がちょうどいいんですw

あとは旅行や今だと夫の一時帰国中に被らないように調整。

今年は定期販売と福袋の焼き上げが少し近かったので、どのスケジュールで焼くかを事前に考えました。

そこで組み立てた日程がこちら。

今年の福袋販売後の日程
  • 1/5 福袋販売
  • 1/6&1/7 第一陣福袋焼き上げ
  • 1/10 定期販売分焼き上げ
  • 1/11&1/12 第二弾福袋焼き上げ
  • 焼き上げ日翌日に発送(計4日)

福袋を注文してくださった方々には「定期販売を挟んでの焼き上げとなります、お時間は10日ほどいただく場合があります」と案内。このスケジュールにしたことで大きな混乱もなく無事焼き終えました。

でね、別に並行してやれるんじゃない?と思うじゃないですか。

実際のところは冷凍庫問題があります。

また定期販売は個数が人により異なるので、一緒にやってしまうと配送ミスが起こり得る。

ミスを防ぐにはなるべく分かりやすく。なのであえて「前半・定期販売・後半」と分けた感じです。

ここにイベント出店などが絡んだり、納品などが絡むと脳内は大パニック。

ミスを防ぐためにもあまりにもキチキチの日程は組まない方がいいかなと思っています。

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ケチらず大盤振る舞いを

お客さん目線では安い方がいいに決まってます。

ではお店側としてはどうでしょうか。

そりゃぁ、なるべく利益は欲しいですよね。

なんですが、福袋は年に一回のこと。このあと長いお付き合いになるきっかけにもなるので、このときばかりはできる限りの大盤振る舞いでいきましょう。

といっても新しく仕入れまくるのは違います。

例えば「あんこ」。たくさん仕入れたんだけど、絶妙にあと1袋ある。

そんなときはあんぱんをメニューに組み込む。

カシューナッツがちょっとだけあるな。そんなときはくるみや他のナッツを組み合わせて、ナッツのパンを焼いてみる。

在庫処理というと言葉がよろしくないですが、キリよく使い切るのもひとつの節約方法。

わたしの場合はパン生地を1回仕込むとパン12個分くらいになります。

先ほど福袋の発送で前半・後半の中でも2回に分かれてましたよね?

単位が12であれば12×4種類の福袋が作れるんです。

実は12月の初めあたりから福袋に何を入れられるかをある程度予測を立てながら仕入れや焼き上げをしていました。

  • お正月っぽいパンは入れたいな
  • あんこが1袋あるから入れよう
  • カシューナッツはナッツぱんに
  • チーズは大きめフォカッチャに
  • 定番のシンプルぱんも入れよう

まずは”今できる範囲のメニュー”を洗い出す。そこに季節メニュー新メニューなどを入れる。ついでに言えばわたしは飽き性なので、同じ仕込みを何度もするのは嫌なんです。

4種類の福袋にはそれぞれ14個入っています。共通するメニューは4つくらいしかありません。

残りの10個×福袋4種類、つまり40個は全部違うメニューが焼ける。完全に気分転換ではありますが、全員に同じ福袋が届かないのもまたわたしの福袋の特徴かもしれません。

ヒントはスタバの福袋でした。

おみみちゃん

「共通するメニュー+見たことあるメニュー+新作」みたいな。

全てをフィリングありのメニューでやってしまうとシンプルぱん好きな人が喜べないので、しっかり2種類は完全シンプルなものを入れています。ちなみに今年は米粉を配合したメニューを新作として入れております。

ついでにこのときの仕入れはすでに1月を意識。1月の定期販売のメニュー=季節メニューですから。

正直クリームチーズやチョコレートは今のご時世だと結構赤字ギリギリです。

そこは福袋だからこそ、他のメニューでバランスを。

『やりすぎない、けどとことんお得に』

そのバランスが大事かなと感じております。

他にもいろいろやれることはあります。

「福袋にショップのクーポンをつける」なんかも手ですね。

ご自身が誘導したいショップでのみ使えるクーポンコードを載せておいたりします。

ただ個人的にはこの手間がめんどくさいのととにかくシンプルに安く提供するが福袋のモットーだと思っているので、導入はしていません。またクーポンの取り入れ方もまとめてみますね。

販売数ではなく完売を

ここ数年は48個ほどの福袋を販売しています。

なぜ50じゃないのって話ですが、わたしのパン生地の仕込みのキリが12だから。

赤字ギリギリを攻めるからこそ変なところのこだわりは捨ててキリよくしています。といっても昨年はあまり宣伝もしていないし、セット販売もほとんどしなかったので「完売するかな…」と不安だったことも確か。

その場合は12・24・36のタイミングで在庫調整をして、受付を終了することも考えました。

ありがたいことに完売してくれたので今回その必要はなかったのですが、イベントでもネットショップでもそう。

「完売」というワードが結構大事になってきます。

イベントで300個もっていって即完売と600個もっていって売れ残るだと確かに売り上げとしては600個の方が多いでしょう。

でもわたしはそれよりも「買えなかった!」とか「すぐ売れちゃったね」の方を優先したい。

なぜかというと、イメージが違うから。

完売”と”売れ残り

どっちのワードが強いって、絶対に完売の方が強いですよね。

もちろんたくさんの方に食べてはもらいたい。しかし先を考えると「売れてるパン屋」のイメージもかなり大事なんですよね。

この考え方はお店により変わるかと思います。ちいさいパン屋だからこそ、身の丈にあった個数を焼く。

以前そんな記事も出しました。ひとり運営だからこその状況を逆手にとってみる。それもひとつの戦略なのかなーなんて。

【食中毒事案から学ぶ】身の丈に合ったはたらき方をしよう売上も生活も大切。でも売れればいい、お金があればいいと思うと人間はどんどん欲が出てきてしまいます。今回は最近起きた食中毒の事例から「身の丈にあった活動を」という部分にフォーカスして解説しています。...

なお福袋は完売後、1週間ほどはカートを残しておきます。これももちろん刷り込み作戦ですw

来年の福袋を楽しみにしてもらえるように今年しっかり大盤振る舞いして、ちゃっかり即完売の雰囲気を醸し出す。そんな感じでぜひ福袋販売についてもお店に取り入れてみてくださいね。

今回のまとめ

今回は「福袋販売、4年続けて気づいたこと」ということで、2025年の福袋販売を終えて感じたことをまとめてみました。

以前はパンセットを毎週末販売していました。いわゆる”ミニ福袋”みたいなもの。いつもより100円くらい安く買えるようにしていました。

狙いはもちろん「リピーター獲得」です。当時はまだまだイケイケモード。

2024年からパンセットは一時休止。理由は「パン屋の縮小をはじめたから」

実はパンセット、結構大変で。発送分と重なると冷凍庫問題が勃発。

そしてずっと続けているとお客さん側としても「ま、来週でいっか!」なんて思いますよね。これが『飽き』ってやつ。

ちょうどいいタイミングで活動を減らし始めたので、思い切ってパンセットを辞めたところ、すごく楽しくパンを焼けるようになりました。

詰まる話、自分で自分の首を絞めていたんです。

ひとり運営はどうしてもそうなりがち。でもかといってパンセットをがんばったことを後悔は全くしていません。そのおかげで基盤ができたんですから。

だからこそ年1回のお年玉福袋は今貴重なものになる。サマー福袋も出しましたが、やっぱり年2回はこちらとしても結構苦しいものがあります。

今年は夏はがっつりお休みでもいいかなーって。それかまたゆる〜くショップを開けといてもいいかも。

お客さんも自分も楽しめるようなパン屋運営。それがわたしにとってのパン屋のゴール地点。

取り入れられる部分はどんどん吸収してください。