今回のテーマは「小麦グルテン」。
近年、グルテンフリーという言葉をよく聞きますよね。
そしてこうも言われます。
パンは敵だ、食べるな!
そんなふうに言われるとパン屋としては肩身が狭いもの。とはいえ、実際に小麦は身体に悪さもするわけで。
パン屋としては知っておいて損はない情報でもあるのです。
ひとつの食材を闇雲に悪と言いたいわけでもないのですが、小麦が起こすさまざまな弊害をパン屋として理解しておく。
これってとても大切なことだと思うんです。
「食べたいなら食べてもいい」
むしろ食べることで幸せを感じるならそれでも良いんです。
何事も”良い加減”でいきましょう。そんなお話です。
身体は食べ物からできている

少し前からダイエットに関する内容の記事を投稿しています。

というのも、わたし自身が7ヶ月で9kgのダイエットに成功(現在は-10kg)。
「リバウンドするものか!」という決意のもと、パン屋運営と健康に関することをコンテンツ配信におけるテーマに掲げるようになったからです。
今のところリバウンドする兆しはありません。
なぜなら「全然無理していないから」。
これまで25年近く痩せたいなと思って生きてきました。
別にめっちゃ太っていたわけではありません。でも一般的に痩せているというわけでもありません。なんとも非常に中途半端なゾーンで悩み苦しんでおりました。
きっとそんな方、多いかと思います。
痩せたい!痩せなきゃ!と誓えば誓うほど、なぜか我慢をして生活をします。
チョコはもう食べない!
おやつは絶対食べない!
(減らんから)ご飯の量を減らそう!
我慢すればするほど食欲は増します。そして我慢すればするほど反動もすごいw
よって3歩進んで4歩下がる。3kg痩せたと喜ぶのは1週間。
じきに4kg戻って自己嫌悪…みたいな。
ね?心当たりある方、多くないですか?
現在MAX体重からは10kg痩せました。体脂肪量だと6-7kgですね。
ちなみにこれでも「痩せ」の部類ではありません。
至って普通で、至って健康的。BMI21台です。でも太くはなくなりました。
この半年で意識したのは「食事」。
BMI23-24くらいの絶妙なゾーンにいる人が決まっていうセリフがあります。
普段、そんなに食べてないのになぁ。
これ、わたしも常套文句でした。
確かに量は食べていません。でも記録をつけていくと高カロリー・高糖質・高脂質なものを好んでいた。
ってことは結局身体に吸収されるのはそれらなわけで、いくら食べないようにしても、たくさん運動しても変化はない。
リバウンドまっしぐらの生活をしていた背景がコレでした。
つまりはこういうこと。
「ヒトは食べたものから出来ている」
でも絶妙な立ち位置で悩み苦しんでいるとこうも考えます。
ならカロリーを下げればいいんだな、よし!
待て待てぃ!カロリーは確かに大切。…なんだけどきっとそれを続けるとバランスが崩れます。
要は「食事の中身」も大切なんです。
それが前にもお伝えした”PFCバランス”。
糖質・タンパク質・脂質はバランスよく。どれが欠けても身体には悪影響なんです。
そうなると今度はこんなことを思います。
…なら、好きなものでバランスとろっと。
はい、わたしがそうでした。
実はダイエット開始当初はまさにその考えで、同じ糖質を摂るでもパンやグラノーラを優先していました。
しかしそれを続けていくととあることに気づきます。
「バランス、取りづらい…」
「なんか身体の調子、微妙だな」
そこで日本食の代表格:おにぎりをメインにしました。
するとPFCバランスもとれるし、何より身体が軽い。
これはもしや…何かあるなと感じて情報収集を始めたわけです。
小麦の構造とグルテンの影響

ずいぶん前置きが長くなりました。
わたしがダイエット開始後2ヶ月で気づいたのは「小麦系を減らしはじめたら体調が変わった」こと。
正直パン屋という身分ですから内心「まじか〜」と思いました。
そう。小麦と身体の関係に気づいてしまったのです。
ただここで小麦すべてをカットすることはしていません。あくまで食事は小麦をなるべく減らすわけですが、おやつであったり、ときどきの朝はパンも食べます。
そのときのパンがね、これまためちゃめちゃ美味しいんですわ!
改めて自分のパンの美味しさにも気づいちゃったわけw
さて、この項目では小麦の構造について解説していきます。
先にざっとまとめてしまうと、小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質の混合物。これが身体の不調を起こすといわれています。
くぅぅ…パンにとってグルテンは肝なのに。
それを全否定されるとは無念であります。
しかし現実は現実。
しかもグルテンはさらに「グリアジン」というタンパク質も含まれており、こいつが食欲の増進や血糖値を急上昇させたりします。しかも依存性がある。
ぐぬぬ…ダイエットの敵じゃないか。というわけで、この辛い現実を一度受け入れていきましょう。
まずはこちらの図をご覧ください(引用:「長生きしたけりゃパンは食べるな」)。

小麦の構造としては「表皮(ふすま)」「胚芽」「胚乳」の3つに分かれます。
それぞれざっとみてみましょう。
【表皮(ふすま)】15%
- 小麦の実を覆う皮の部分
- 食物繊維や鉄分、カルシウムが含まれる
【胚芽】2%
- 小麦の芽の部分で要
- 良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルが含まれる
- 【胚乳】83%
- いわゆる白い小麦となる部分
- 主成分はブドウ糖
- グリアジンとグルテニンのタンパク質を含む
小麦粉は一般的に小麦の実から「表皮」と「胚芽」を取り除いたもの。つまり「胚乳」のみを製粉したものになります。ということは、めっちゃブドウ糖ですね。
白い小麦粉に残されているのはグルテンばかり。
全粒粉や小麦胚芽のパンが健康にいいといわれる所以はここにあります。
ここでようやく「グルテン」というワードが顔を出しました。
ここからはグルテンに焦点を当てていきましょう。

まずグルテンとはタンパク質の一種になります。が、一般的にいわれるタンパク質の中でも”悪さしがちなタンパク質”。
でもパンにとってグルテンはパンを膨らませるためにとても重要なもの。だから切っても切れない縁だったりします。
小麦に代用されるものとして「米粉」がありますが、米粉にはグルテンや他のタンパク質は含まれていません。
なので代わりとなるタンパク質を何かしら入れます。とはいえ小麦粉ほど多くないので健康にいいといわれているんですね。
で、このグルテン。どんな悪さをするかというと「腸の表面に薄く付着することで腸の機能を妨害してしまう」んです。

グルテンは水を含むとネバネバとします。
そのおかげでパンは膨らむし、形になるのですが…それが身体の中でも同じように作用してしまう。そうなると腸で吸収されるべき栄養素が吸収されない。
すると腸も反応せざるを得なくなります。これが「炎症」。

さらに炎症が長引くと腸の壁である腸壁が傷つきます。からのー、粘膜細胞同士の結合がゆるみ、隙間ができる。これがいわゆる「小麦のせいで腸に穴が空く」といわれている仕組みです。
便秘が身体に悪いといわれるように、腸は身体にとって大切な器官です。
栄養素の7割近くが腸で消化吸収されるらしいですから腸に傷をつけるだなんて、自分で首を絞めているようなもの。
しかもその傷からグルテンがあちこちに飛び、炎症を起こしていたら…恐ろしい。
…パン屋を10年以上やってますが、だんだん胸が痛くなってきました。
しかしまだ続けますw
グルテンによる炎症で身体にどんな影響があるのかをざっとまとめてみました。

全部が全部グルテンだけのせい!ではありませんが、少なくともグルテンにより炎症が起こることでなにかしらの要因の一部にはなっている。
そもそも小麦がここまで普及しているのはなぜでしょうか。
小麦自体は人類最古の作物のひとつといわれているようです。いわゆる”古代小麦”と呼ばれるものは実のまま食べていた。となると良い栄養素の部分も食べていたわけです。
それが歴史を重ねるごとに品種改良がなされ、現代の小麦は古代小麦の約10倍もの生産性があるそう。
育てやすいように薬剤を使ったりしており、そんな中でグルテン量が40倍にもなったといわれています。
おかげでふわふわなやわらかパンが食べられるわけですが、グルテンのいたずらを知ってしまうと一概に喜べないですw 困った困った。
食物アレルギーとグルテン不耐症

ここからはアレルギーについても触れていきましょう。
わたし自身が重度の卵アレルギーがあるのですが…実はダイエットをはじめて、食生活を変えたら一部の卵使用の製品を食べられるようになりました。
もともとアレルギーがなかったタイプ。妊娠を機に体質が変わり、花粉症と卵がダメに。
ストレスも相まって、卵の完全除去生活をはじめてまもなく9年が経ちます。
正直ね、ここでグルテンが悪者だ!といわれても卵で不便な生活を強いられているので小麦の完全除去はしません。
なんも食べれなくなっちゃいますから。
実はグルテンの悪さにも名前がついています。
- 小麦アレルギー
- セリアック病
- グルテン不耐症
この中で「グルテン不耐症」はときどき耳にしますよね。
こちら、一応アレルギーの仲間。

アレルギーとは「免疫反応による反応」のこと。
アレルギーには2つの種類があります。
- 即時型
- 遅延型
特定の食べ物を摂取することで症状が即時起きるのが「食物アレルギー」。これは即時型に分類されます。
生まれつきその食材がダメというのが当たりますね。
少量でも摂取すればすぐに発症。ときにアナフィラキシーショックと呼ばれる劇症型の症状を呈し、命にも関わる危険なアレルギー反応が即時型です。
対して遅延型はある程度時間が経過してから発症します。
少量では発症しないこともあるし、数時間から数日までさまざま。そうなると日常的に体調が悪いのが何が原因かわからないんです。
ちなみにわたしの卵アレルギーは遅延型。…なんですが、血液検査には一切数値として出ません。
症状としては卵摂取から3時間後に胃がゴロゴロ。その直後に嘔吐と下痢をひたすら繰り返し、冷や汗が大量発生。これを3時間ほど耐えるとすっかり良くなります。
明らかに血圧も下がる体感はあるのですが、3時間経つとケロリ。
わたしにとっては卵のタンパクがグルテンのような悪さをしているのかもしれません。
病院を受診しても同じことを言われます。
卵を食べてそうなるならアレルギーなので避けてください。
一応情けの頓服は持っているのですが、打つ手はない。
遅延型アレルギーの難しさはここにあります。
グルテン不耐症が遅延型アレルギーの一種だとしたら、それは避けないと体調はずっと悪いままということになります。
全員にグルテンが悪いわけではありませんが、そういった知識はつけておきましょう。
お客さんに聞かれたときに答えられるようにすると信頼にもつながります。
パン屋が考えておくべきこと

さて。耳の痛い話が続きました。
最近は「米粉パン」がちょっとしたブームとなっています。
わたし自身は米粉配合のパンは焼きますが、米粉100%のパンは焼きません。
理由は「小麦のパンのが好きだから」。これだけです。
なぜこんな悪者といわれるのにパンがずっと存在するのか。それは「美味しいから」ですよね。
だからパン屋さんは存在しているし、なくなりません。
グルテンが人間の身体にいたずらをしていることも事実。これを知っておくかどうかはずいぶん違うものです。
ここで全粒粉や小麦胚芽についても触れておきましょうか。
ここまで白い小麦粉が悪さをするんだよ〜みたいな感じでしたので、「なら全粒粉100%なら健康じゃない?」と思うかもしれません。
が、全粒粉自体は小麦の全部を製粉したもの。ということは小麦であることに変わりはないのです。
確かに白い小麦粉よりは栄養素はあります。
なのでそれよりは健康にいいかもしれませんが、小麦は小麦。
グルテンをしっかり理解していれば、全粒粉100%だから誇らしくできるぜ!と言えないことがわかります。
結局ね、パンは敵になってしまうのですよ。
ま、でも美味しいからわたしはパンを焼きますけどね。
わたし自身、ダイエットをしてこう感じました。
パンってダイエットの敵かもしれない…
おい!お前パン屋だろ!と思いますよね。
でもやればやるほど、そう思えてきてしまう。
なんだけど、いざときどき食べると…めっちゃ美味しいんです。
だから日々のご褒美として食べるようにしています。
そしてこうも言えます。
「パンを食べたから太るわけではない」
単純に満腹感を感じるかどうかなわけで。あとは栄養素が偏るかどうかな話で。
それと別でグルテンのことは考えた方がいいかなと。
必要以上に怖がらず「美味しいから食べる」でいいんです。
そんな考え方で全然良いんじゃないかな?と思うんですよね。
アレルギー持ちとしてはどうしても卵は敵です。
卵が”完全栄養食”と呼ばれるのは知っています。
でも食べたら救急車コースなので、食べれない。
もともと卵は大好きでした。ゆで卵は毎日食べてたし、好物はオムライス。
そんな大好物をまったく食べられなくなり、敵としてみなすようになりました。
今、わたしの中では小麦がそんな存在になりそうで怖い。
ただ体質改善していく中で卵が食べられるようになってきた。そうなると「共存できるかも」なんて希望も湧いてくる。
人はそれぞれ好みがあります。
そしてそれぞれの状況があります。
お米が嫌いな人もいるし、小麦粉が嫌いな人もいる。
野菜が好きな人もいるし、嫌いな人もいる。
だからパンを好きでいてくれる人がいるなら、その人を精一杯しあわせにしてあげたい。
パン屋としてはそんな感じでいいのではないでしょうか。
この記事でグルテンのいたずらを知り、落ち込んだ部分もあるかと思います(というかわたし自身がだいぶ凹みました)。
ときにはアンチ小麦の方に出会うこともあるかと思います。
でもそれはそれぞれの想いがあるから仕方がないこと。
美味しいパンを焼くことに誇りをもち、楽しんで焼くことで人をしあわせにする。
ぜひそんな誇りを持って焼いてください。
今回のまとめ

今回は「小麦はやはり敵なのか?」についてまとめてきました。
この頃ダイエットの話ばかりになりますが、健康に気を遣えば遣うほど「正しい知識って大切だ」と思うんです。
その人がダイエットをしたいならこうする。
その人が身体の不調を治したいならこうする。
そのとき、その人に合ったことを実践する。
だから正解ってないんですよね。
カロリーやグルテンを恐れるあまり、何も食べれなくなったら本末転倒。そんなの全然楽しくないですもん。
そりゃ命の危険があるなら完全除去ですが、食べれるのに食べたい!食べたい!と我慢しすぎてそれがストレスになるなら全然食べたらいいんです。
要はどこにメリハリをつけるか。
今回はパン屋にとって耳の痛いハナシにはなりましたが、わたしたちができることは明確です。
必要としてくれる人に最大限の愛を送りましょう!
それでは。