このサイトではちいさなパン屋の継続のコツや運営についてお伝えしています。
わたしがパン屋をはじめた約10年前。当時もスマホはだいぶ普及していましたが、情報は今より少なく、人づてに聞いていました。
今回の動画では”パン屋をはじめたころに知りたかったこと”を4つご紹介します。
今はとても便利な時代。
反面、自分で情報を管理しなければいくら脳みそがあっても処理しきれません。
なるべく噛み砕いてお話しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
食品衛生について
パン屋を開業するためには「菓子製造業許可」と「食品衛生責任者の資格」が必要になります。
裏を返せば、この2つがあれば誰でもパン屋やお菓子屋にはなれてしまう。
かくいうわたしもその1人。
もちろん志を持ってはじめているため食品衛生の最低限の知識は皆さん知ってるかと思いますが、改めてここで知っておきましょう。
ここで参考になる資料は毎年開催されている「食品衛生責任者再講習会」の資料。
最近はオンライン開催になっているため、冊子をもらうことも減りました。
内容としては結構モリモリあるんです。
中でも食中毒は毎年多くの時間を割いて話がされます。
以前こちらの記事を更新しました。
大きなイベントに出店するため大量の商品を用意していたものの、保存が適切でなく食中毒が発生。
1人運営の小さなお菓子屋さんが5日かけて焼き溜めていたマフィンだった。
ニュースでも大きく報道されました。
これは手洗い・うがいの問題よりも「保存期間と保管温度が適切でなかった」もの。
身の丈にあったイベントに出店し、身の丈にあった量を焼いていくのが唯一回避できる方法だったと思います。
手洗い・うがいも食品を扱うものとしては重要。
厚生労働省のHPにこういったものもありますので、正しい方法を知っておきましょう。
また作業時には清潔な手袋をつけるのも1つの方法です。
わたしは普段ブルーのニトリル手袋を使用しています。
あえてブルーを選んでいるのは
- 白は破れた時にパンに入っても気付けない
- 黒は手袋の汚れに気付けない
のが理由です。
薬局などで食品衛生法に対応したものが売っています。サイズがしっかり合っていれば使いやすいのでオススメです。
いくら対策をしても万が一のこともありますよね。そういった事案のために保険に加入することも考えましょう。
これから厨房の許可を得る方は、おそらく保健所関連が終わると何かしらの案内があるかと思います。
例えばこちらは日本食品衛生協会が提供しているもの。わたしもこちらの保険は加入しています。ご参考まで。
アレルギーの知識
食品衛生に一部絡んだ話になりますが、卵や乳などのアレルギーを持っているお客さんもいらっしゃいます。
特にパンに関しては小麦はもちろん、生地に卵や乳を使うこともありますよね。
アレルギーについての知識は持っておきましょう。
ただなかなかアレルギー持ちの苦労を知ることは難しい部分もあるかと思います。
卵アレルギーであるわたしの卵への向き合い方を記事にしていますのでご参考ください。
また最近では米粉パンがブームになっています。
小麦アレルギーの方には心強い味方。
ただし!生地に卵や乳を使用する場合はそれらについてしっかり表記をしておきましょう。
というのもアレルギーの割合としては『卵、乳、くるみ、小麦』の順に多く、小麦アレルギーの方が卵アレルギー持ちなこともあります。
米粉パンだから安心していた!とあとから言われたとしてもこちら側ではもう何もできません。可能であればパンを販売するときはPOPなどにシールでもいいので、アレルギー表記があるといいですね。
仕込みの側面から考えると「こね機のボウルを分けておく」がまず第一。
その上で成形時の順番は卵が最後になるようにします。
これ、わたしが卵アレルギーだから最後にしているのではなく、アレルギーの重篤度で考えると卵は危ないんです。
パンなので小麦は基本使っているとして、牛乳を使うしろぱんや卵を使うメロンパンは最後の方に作業することが好ましいです。
作業するシートを別にするのもひとつの方法。
わたしは食品衛生的に気になるので、日頃から作業台にはシリコンマットを敷いています。
6枚ほど持っていますので、アレルギー品目ごとに変えたり抹茶やココアなどのときはシートを変えています。
なかなか便利ですよ。
なにかあってからでは遅いですから自分の身も、お客さんの身も守れるように事前に対策をしておきましょう。
会計・帳簿管理
「パン屋開業」となるとお勤め以外は多くが個人事業主という形でお仕事をします。
中には法人化される方もいるかと思います。
このサイトではちいさくはたらきたい方を対象にしているので個人事業主目線でお伝えします。
まずパン屋を開業するには「パン工房」が必要です。
パン工房とは「菓子製造業許可」を取得した厨房のこと。
厨房というとわかりにくいので、基本的には「パン工房」と呼んでいます。
この許可でパン、お菓子、ケーキなどが販売可能。食品衛生法改正によりサンドや軽食の提供も可能になりました。
菓子製造業許可は管轄の保健所で申請し、現地調査のもと許可証が発行されるもの。
許可証が発行されると、その場所が「厨房」として認定されます。
そうなると自ずと「仕事場」ということになり、開業届を出し、個人事業主としての活動がはじまります。
以前からお伝えしていますが、ちいさなパン工房を運営されたい方の中にはご主人の扶養範囲内で活動したい方も多いです。
が、パン工房を作る前にご主人の会社の規定が「開業届を出した時点で扶養から外れる」となっていないか工房を作る前に必ず確認をしてください。
開業届を出す際、おそらく青色申告承認申請書を提出します。この時点で毎年3月に提出する「確定申告」をすることになります。
ここからの話は税務関係となるのでわたしの管轄外。
それぞれで勉強や対策をすることになるのですが、まったく知らない方はこちらの本から入ってみてください。
会計の基礎の基礎はわかるかと思います。
特典を使ってエクセルで帳簿を作ることもできるので、入り口としてはちょうどいいかと思います。
会計の管理でいえば会計ソフトを使うと楽です。以前紹介しているのでこちらをご参考ください。
簿記をしっかり学びたい!という方はこちら。
なんと無料で簿記が学べます。テキストもダウンロードできます。
十分すぎる内容ですので、とてもおすすめですよ。
そして近年、話題になっているのがこの2つ。
- インボイス制度
- 電子帳簿保存法
インボイスは消費税のルール、電子帳簿は請求書や領収書のルール。
めちゃめちゃ噛み砕くとこんな感じ。
インボイス制度
「事業者間でやりとりする請求書の書き方が変わったり、発行する請求書の形式によって消費税の納税額が変わる消費税のルールのこと」をインボイス制度といいます。
インボイス制度への登録は任意ですが、大きな企業が取引先の場合は取引先側に負担がかかるため取引終了や価格交渉の可能性があります。
こちらの本がわかりやすかったので、いまいちよくわからないという方は読んでみてください。
電子帳簿保存法
「書類や帳簿の保存を楽にするための法律」が電子帳簿保存法。
取引の証明となる領収書や請求書などは7-10年の保存義務があります。
これまでは紙優勢の管理でもよかったのですが、2024年1月1日以降は電子で取引をしたデータの保存は紙保存が禁止され、電子化することが義務付けられました。
特に電子帳簿保存法についてはすべてのはたらく人に関係してきますので、ぜひ知識として入れておきましょう。
図がたくさん載っていてわかりやすい本がありましたので参考まで。
少し前の時代であればやらなくてよかったことが便利になったゆえ、ルールが必要になってくるようですね。
会計系はパン屋の業務ではありますが、専門分野ではありません。
規模が大きくなってきたら税理士さんに頼んだり、そうでなくても会計ソフトを利用したりとアナログ的なミスは少しでも減らせるように工夫しましょう。
マーケティングの流れ
パン屋といえ「メニューを考えて→材料を仕入れて→パンを焼いて→宣伝をして販売する」といういわゆる”フロー型”の商売。
一言でいえば『モノを売ってナンボ』です。
そうなると楽しいから焼いているだけではダメ。
宣伝をして、お客さんを見つけて、買ってもらってそのお客さんをつかまえて、長いお付き合いをしたい。
どうやったらお客さんの目に触れるか、
どこに出店したらお店に来てもらえるか、
どうしたらリピーターになってもらえるか。
これらはすべてマーケティングが関わってきます。
マーケティングと聞くとなんだか大袈裟な気がしますが、実は先ほどお伝えした「宣伝して買ってもらう」が真理。
1回きりでは常に新規のお客さんを見つけないといけなくなり大変ですよね。リピーターがつけば定期的に購入してもらえます。
パンは単価こそ安いですが、消費するもの。だからリピーターは比較的つきやすい分野です。
以前こちらの記事を更新しました。
単に長期連休の必要性を伝えているだけではなく、「緊急性」や「希少性」を出してお客さんの心理にはたらきかけていることをお伝えしています。
例えばAmazonのセールがあるとします。「25%引き」なんて表記があると心が動きますよね。しかもそこに「タイムセール」だなんて赤い帯で書かれた日には「買わなきゃ!」と思います。
さらに「10000円以上でポイントアップ!」と書かれたら「あと少しで10000円だからもう少し買っちゃおう」となる。
Amazonの思う壺にどっぷりハマるわけですw
そこまで大規模なことはできませんが、ちいさなパン屋だって似たようなことはできます。
- キャンペーンコードを発行する
- ショップポイントを付与する
- 限定のパンセットを販売する
これも十分マーケティングなんです。
ただそこにはパン屋だとちょっとした壁があります。
割とアナログな人が多いこと。
そんな方のために記事も作りましたのでまずはひとつずつ整えてみてください。
今回のまとめ
今回は「パン屋が覚えておくべき知識」ということでパン屋をはじめる前に知っておきたかったことを解説してきました。
ポイントは4つ。
「パン屋をはじめる前」とお伝えしましたが、情報は時代とともに変わってきています。
最近ではインボイス制度や電子帳簿保存法の施行など、パン屋をはじめてからも変わる事柄が増えてきました。
過度に反応してしまうと心が疲れてしまいますが、正しく情報を知って、自分の身を守ることも大切。
今後もそのお手伝いができたらと思います。