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パン屋の話

パート代くらい稼げますか?に回答します!

普段はちいさなパン屋を運営しつつ、パン屋にまつわる情報発信をしております。

ブログとYouTubeチャンネルが今の感じになって早3年。

ものすごくニッチなところを絶妙な位置で攻めているなと自分でも感じておりますw

わたし自身はパン屋の卒業を目指していますが、これからやりたいことは今からちいさなパン屋をはじめたい人や今ちいさなパン屋を運営されている人の応援団長になること。

その中でパン屋さんをはじめたい方によーーく聞かれることがあります。

「パート代くらい、稼げますか?」

これ、めちゃめちゃ聞かれます。

今回はこの質問に補足をしながら返答していきます。

この記事の動画はこちら

個人事業主と給料の関係

まず割と重要なところからお話ししていきましょう。

そもそも個人事業主には「お給料」という概念がありません。

イメージはこんな感じ。

売上があって、そこから経費を引いて、所得として申告し、1年の集計を出す。で、所得に合わせた税金を払う。これが会計上のざっくりした流れになります。

1年の集計というのが「確定申告」であり、それをもとに税金等の計算がされます。

所得税・住民税・健康保険料などはこの『所得』をもとに計算される。

ここまでの話で「お給料」というものは出てきませんでしたよね。

そう。個人事業主には「お給料」という概念がないのです。

だから一概に「パート代くらい稼げるよ」と軽くも言えない。

ここからは補足ですが、会社などであれば従業員(パート)の給料は経費として計算されます。

お伝えしている通り、個人事業主にはそれがない。

ならどうするの?という話ですが、お給料的な扱いで自分の手元に出したい場合。

「事業主貸」「事業主借」という勘定項目として処理されることになります。

例えば「事業の現金5万円を給与として自分に支払った」場合。

借方に「事業主貸 50000円」、貸方に「現金 50000円」と表す。

ん?借方?貸方?なにそれ?という方は簿記を勉強してみましょう。お金の出入りを誰がみても分かるように表しているものです。

ざっくりまとめると事業でのお金を個人に”貸している”と考えて、外に出すイメージ。で、この事業主貸という項目は期末で元入金に入れるように処理をしていきます。

ん?元入金って?という話はやっぱり簿記の話になるので、ぜひ調べてみてください。

こちらの本はわかりやすくてオススメです。

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帳簿管理については会計ソフトを使うことを推奨します。

確定申告に向けて準備しよう!11月になるとソワソワしてきます。そう、1年の終わりが近づくから。活動をしていると避けて通れないのが「確定申告」。今回はそんな確定申告について解説しています。少しだけインボイス制度についてもまとめていますので、ご参考ください。...

このことから分かるようにそもそも”1年を通して”の会計になるため、毎月固定で給与のように外に出すことは意外と難しい。

わたし自身こういうことを知らずに活動をはじめてしまったので、今もなお「めんどくさい、嫌だ、キライ」と思いながら毎年2月に作業をしています笑

ここではまず「個人事業主はお給料という概念がないから”年間を通した”所得から使えるお金を考えることになる」と覚えておきましょう。

パートと個人事業主の違い

次にパートと個人事業主の違いについて理解を深めていきましょう。これ、パートに限らず正社員の方が退職してパン屋になる場合も同じです。

最大の違いは「会社に属しているか、個人なのか」

例えばチェーン店のパン屋さんに勤めているとしましょう。

このとき会社に属しているなら月に一度決まった日にお給料がもらえます。逆に個人でお店を開く場合はそういうことはありません。

お金の動きとしては先月の売上などが振り込まれます。

とはいえ売上はこのあと仕入れなどに使うわけですから、これをそのままウェーイ!と使うことはできませんよね。

そこの流れも気持ちも全然違うんです。

他の違いだと、社会保険などでしょうか。

正社員の方は会社に属しているため、お給料が口座に振り込まれる時点ですでに差し引かれています。

扶養内のパート勤務の場合は一定の金額までであれば社会保険料の支払いはありませんので、勤務時間分をそのままお給料としてもらうことになります。

個人事業主になった場合はどうかというと……この場合は売上から経費を差し引いた所得に、各種税金が計算されることになります。

勤めているのと違う点は「先に引かれるのか、あとから請求されるのか」

勤めていれば手元にお金がくるときには諸々が差し引かれた状態のため、あとは自由。

個人事業主は経費等を差し引いた金額から計算し、翌年に税務署からの請求書(案内)がきて、支払う。

よく芸人さんが賞金を手にしたりして「お前、来年気をつけろよ!」なんてネタにしていますがアレです。

2024年1月から12月の分の請求は2025年に行われる。時間差があるため自転車操業をしていると大変なことになります。

さて。ここでよく聞かれる「扶養内ではたらくか否か」にも少し触れておきましょう。

まず前提として「扶養内ではたらくのか」「扶養外ではたらくのか」は開業の前から家族とも話し合っておくことをオススメします。

ガッツリお店として運営される場合は、いわゆるマイクロ法人みたいなものを作った方が社会保険料の支払いが減ります。

扶養内の個人事業主での活動を希望しているのであれば、旦那さまの会社の扶養要件を必ず確認してください。

それを確認せずに勢いで開業届を出すとその時点で扶養から外れることもあります。

またよく聞く103万円の壁はパート勤務の方の話。これは個人事業主になるとポイントは48万円と130万円の壁になります。

こちらは以前解説しているので参考にしてみてください。

パン屋さんになりたい人向けサクッとQ&A「これからパン屋さんを始めたいな」「イベントでお菓子を販売したいな」という方の入門編の記事です。せっかくお金をかけて、時間をかけて、心を込めて始めるんですから、しっかりといろんなことにも目を向けておきましょう。そして自分の身は自分で守る。安易な名前貸しなどはやめましょう。詳しい内容はそれぞれの記事にてご覧ください。...

ざっくり扶養内パートと個人事業主の違いを表にまとめてみましょう(ここではパン屋にパート勤務して月に8万円のお給料をもらっていると仮定)。

これを元にここからはもう少し具体的に考えていきましょう。

理想と現実を独占告白

ここからはパン屋になったあとの様子とともにお話ししていきます。

ポイントをいくつか挙げてみました。

それぞれ解説していきます。

売り上げは月によってバラバラ

個人事業主は仕入れからなにからすべてを自身で管理します。

いくら今月の売上が順調だった!ひゃっほーい!と思っても、来月の仕入れはそこから出さなければなりません。

飲食の原価率は30-50%といわれます。家賃、光熱費、消耗品、その他諸々を考えると結構なくなっちゃうんです。

言葉を選ばずにいえば、どうしても自転車操業になりがち

特に飲食は回さないと回らないフロー型のビジネスですから、「売上が多い月=経費がかかる月」でもある。

好きなことを仕事にしているので、もちろん楽しいとは思います。

ただどうしてもお金の面でいうと安定は難しい。さらに季節でも売れ行きって変わりますよね。

【ちいさなパン屋の夏】売れない時期、何してる?食べ物を販売していると必ず”売れない時期”があります。パン屋さんはそれが割と「夏」であることが多い。その時期に何をするのかはお店それぞれですが、わたしはチャンスと割り切って普段やれないことをします。今回はそんな内容をまとめています。ぜひご参考ください。...

特に夏。暑いからパンなんて食べようと思えません。

もっとさっぱりした麺とか食べたいですよね。お盆の期間は帰省しているからショップを開けていても、あまり売れません。

今では「キタキタ、この時期がキター!」なんて思えますが、最初は不安でいっぱいでした。

これをどう脱却するか。二択しかないかなと。

  • がんばる
  • 休んじゃう

わたしは後者

売れないときは売れない。むしろお客さんと一緒に自分も休んじゃおう!みたいな笑

休むことで売上はありませんが、頭と心はスッキリします。

あえて休むのもひとつの方法です。

長期連休前後にしておきたいこと飲食という職種柄、どうしても休むことを躊躇する方が多い。しかし「休んだからこそできること」も中にはあります。メニューを考えたり、リフレッシュしたり、工房の大掃除をしたり。人間ずっとフルスロットルでは動けません。メリハリをつけた活動で、楽しくパンを焼いていきましょう!...

どうはたらきたいかを考える

「どうはたらきたいか」これね、かなり大切。

独身の方はむしろゴリゴリ動いちゃってください。お子さんがいない場合も比較的動けます。

これがね、子育てをしているとだいぶ違います。

わたしは「ちいさく、はたらく」をテーマにお伝えしていますから、おそらく子育て中のママさんもみてくださっていることと思います。

学校行事もあるし、PTAもあるし、習い事もある。人数が増えればそれだけまた行事も増えます。

わたしは息子が保育園のころまでかなり自分優先で動いていました。

小学校に上がると子育てもまたリズムが変わります。

確かに着替えなどのお世話をする時間は減りました。

でも学校で悩んで帰ってくるじゃないですか。ときには「学校行きたくないな」と思うこともあります。

例に漏れず行き渋りがあったのでサポートに徹しました。

イベント出店中心からネットショップ運営中心に活動の拠点を変えました。

どうでしょう。5年くらいかかりましたかね。

どうはたらきたいか、は自分の希望も含まれますが家庭とのバランスも考えることをおすすめします。

特に子育てはいずれ終わりを迎えます。

今、このときを大切にするのも素敵な考え方だと思います。

どの販売方法がオススメ?

パン屋は「材料を仕入れて加工し、販売する」というフロー型のビジネスだとお伝えしました。

ただパンやお菓子はアクセサリーなどと違い、一過性のもの。

「1回買ったらすぐなくなる、そしてまた購入する」

アクセサリーは1回購入したらしばらく使いますよね。でもパンやお菓子は食べたらおしまい。

単価はどうしても低くなりますが、気に入ってもらえたらリピートしてくれるもの。

売上を増やすなら稼働率を上げるのが一般的ですよね。

飲食など一過性のフロービジネスのものは「コツコツ型」と「一発ドン型」があります(わたしが名付けましたが)。

コツコツ型は店舗運営やネットショップ運営。

一発ドン型はイベント出店や委託販売。

違いは納品の量

ネットショップはときに一発ドン!の要素もありますが、冷凍庫の兼ね合いもあったりで単価だと3000円台が多め。

店舗は10個購入してくれたら「たくさん買ってもらえたな」と思いますよね。単価だと2000円いくかどうか。

そうなると月に40万円売り上げるには相当回さなければなりません

一発ドン!は一気に納品できるのがポイント。100個の納品は1個200円なら20000円の売り上げですよね。

平日はコツコツ型、土日は一発ドン型で組み合わせると比較的売上の目処が立ちやすいかと思います。

ただ一人運営だとセルフブラック企業になりがち。

適度にお休みをとり、心と身体のリフレッシュは心がけましょう。

で、パート代くらいは稼げるの?

さて、そろそろ本題の「パート代より稼げますか?」にお答えしていきましょう。

『やれるっちゃやれる』

『すべては自分の動き次第』

これが答え。

ここまでお話ししてきてなんとなく伝わったかと思います。

個人差がありますから、これ!とは言えないんです。

それに単に稼ぎたい、手元にお金が残るようにしたいのであれば勤めていた方が断然楽

好きなことを仕事にしたい!でも稼ぎたい!は難しいです。正直。

ただこうともいえます。

「好きなことが仕事だから趣味も仕事になる」

あくまで仕事として考えている場合ですが、わたしであれば『パン作りが好きだからそれでお金をいただけるならめっちゃいいじゃん!』と考えるタイプ。

要は捉え方なんですね。

パートで8万円お給料が出たとして、趣味のパン作りに使うお金を出していたら残る分は減ります。

それがパン屋として活動をしていたらどうでしょうか?

経費になるんですよ。もちろん常識の範囲というのは守りましょう。

手元にくるのが同じ8万円(パート代のイメージ)だとして。

8万円から趣味として減っていくのか、仕事で経費として使って8万円手元にあるのか。

充実感は違います。これ、結構大事な考え方。

注意していただきたいのが、会社員から個人事業主になる方。

パン屋という職種の場合、ほぼ間違いなく手取りは減ります。

最初から爆速スタートできることは難しいし、継続するのも難しい。

ご家庭があり、フルタイム勤務からパン屋になる場合はしっかり夫婦間で話し合ってくださいね。

まとめ

今回はよーく聞かれる質問「パート代くらいは稼げますか?」にお答えする内容でした。

ポイントは4つ。

わたし個人としてはゆーてもそこまでお金は貯まりません。でも自由度で考えたらこのはたらき方になったことに後悔はありません。

総じてとても楽しい日々を過ごせています。

楽しいことばかりではありません。それはどのお仕事でもそうですよね。

そうなると大切なのは「自分がどうしたいか」。そして「自分の軸ってなんだろう?」を日々考えること。

わたしはたまたまその軸が揺らぎにくいほど固かった。

これ!という答えが出ないのは申し訳ないのですが、個人事業主は青天井でもあります。

伸ばすときはぎゅーんと伸びますので、その波に乗るのも良いかなと思います。

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