今回は「パン屋の通販という働き方」について気持ち的な面を掘り下げてお話しします。
わたしが運営しているパン屋は店舗をもっていません。
最近までイベント出店もしていましたが、現在は通販メインの活動。
「10年の活動の棚卸し」としてYouTubeやブログなどに経験をまとめています。
お店をもたないという働き方。
現実的ではないように見えますが『自分の守りたいポイント』を考えた結果、今に至りました。
正直ガッツリ稼ぎたい!という方には1人で働くこの方法は全くもって合理的ではありません。
わたしの場合は“家庭優先“という最大のポイントがあり、その中でいかに自分と家族の心身の健康を保ちつつ、大好きなパンを焼きながら働くことができるのか。
そのパンを美味しく食べてくれるお客さんと顔を見ずとも繋がる方法は何か、を考えた結果“通販“という働き方を見つけました。
商品の個性を考えておく
通販を始める前に考えておきたいのが「自分のパンの特徴」です。
言い換えれば「個性」ですね。
特徴のないパンを焼いていてもなかなかリピートはしてもらえません。
「また食べたい!」と思ってもらえるような個性は必要だよね!
わたしの場合、あえて“シンプルなパン“を特徴にしました。
これには自分の卵アレルギーが関係しています。
卵はパン生地を作る上でも重要な要素。
- 生地のキメが細かくなり、ボリュームが出る
- 風味が良くなり、生地にコクが出る
でも卵を入れたら自分は食べられない。
なら自分の食べられるパンを焼こう!というのが、卵アレルギー悪化以降わたしがパンを焼き続けている理由の1つでもあります。
メロンぱんはアレルギーの悪化前にレシピを完成。
人気商品でもあったので残しておきましたがそれ以外は基本的に卵は使いません。
こうしてわたしの焼くパンの特徴が決まりました。
「毎日食べたいシンプルもちもちパン」
美味しい調味料を使い、生地を楽しむパン。
アレンジをしてもいいし、自分でサンドしたりジャムなどを合わせてもいい。パン粉にしたっていいんです。
変幻自在のシンプルパン。
テーマというか、キャッチコピーですね。
ブログや動画でいう“タイトル“みたいなもので一言でなるほど!と思うようなものがあると分かりやすい。
わたしのようにマイナス要素からヒントをもらってもいいし、「〇〇から酵母をおこしている」などの個性でも構いません。
「パン屋です」だけなら、家の近くのパン屋さんでいい。
いつでもいけるところのパン屋さんでいいんです。
あえて送料をかけてまで買いたい!と思える要素がないと通販で売上を伸ばすことは難しい。
ちょっと遠方の美味しいパン屋さんもやっぱり「また食べたい!」要素があるから時間をかけていきますよね。
通販は対面販売とは違い、お客さんと顔を合わせません。
その分、文字と画像だけで分かりやすく伝える必要があります。
食べてみたいな、と思うようなキャッチコピーを考えましょう♪
活動のバランスを考えておく
- 通販1本で活動するのか
- 店舗運営と並行するのか
- イベント出店もするのか
以前の動画でもお話ししている通り、通販という販売方法は受け身です。
カートを出して「はいどうぞー」ではありません。
SNSなどで自分でアピールしたり、新しいメニューを考えていく必要があります。
イベント出店で傾向を掴んだりとやはり初めから通販だけではかなり厳しいという現状はあります。
もちろん通販だけでも超人気なお店もあります。
「お届けまで数ヶ月!」とか「お届けまで何年待ち」とか。
これはこれでプレッシャーになってると思うので、すごく大変な働き方だろうなと想像も出来ますよね。
店舗や出店と並行して通販を考えるのであれば、発送までにどのくらいの期間が自分の焼くペースに合うのかを実際に販売しながら調整していきましょう。
「今日はお店の日、今日は通販の日」のように固定するのもアリだね。
わたしの場合は6日以内の発送を目指して在庫数を設定しています。
自分なら注文して1週間くらいで届いて欲しいと思うので6日以内を目安にしています。
3つのサイトで販売をしており、それぞれのセット数は3セットに固定しています。
1セット4個。パンは20種類近くあります。
なんやかんやと注文が重なってくると週に400-500個になることも。
うまく組み合わせて焼き上げながらスムーズに発送するまでを考えます。
販売方法はさまざま。
一気に焼き上げてセット売りはお店向き。
わたしの場合パンの種類は常時20種類ほど用意しているので、同じパンが重なることもあれば、注文されているカートが全て違うパンということも。
これはこれで気分転換にもなって結構楽しい部分もあります。
1回の仕込みで焼ける量は4の倍数のため1セットを4個としています。
ある程度注文があると一気に仕込むことも出来、お待たせする日数も減ります。
この辺りは店舗があるかないか、出店があるかないかも関係してくるので自分の働くペースに合わせて設定しましょう。
ずーっと焼いていても疲れてしまうので、いいタイミングでお休みしてリフレッシュも必要!
楽しいとつい仕事のことばかり考えてしまうし、売れてくるとどんどん売りたくなりますがたまに線引きをして自分を労ってあげましょう。
手数料について知っておく
通販最大のデメリットは『手数料』。
販売するサイトによっても変わりますが、基本的に手数料がかかります。
手数料は甘くみてはいけません。
手数料以外にも通販ではさまざまな雑費がかかってきます。
1つずつ梱包するのであれば袋。
送るためのダンボール、緩衝材、テープ。
ショップカードもあった方がいいですよね。
納品書を印刷するためのインクや紙代に、ラベルを印刷するなら機械やシールも。
特に昨今は円安の影響やインフレの影響もあり、パンの材料以外も少しずつ段階的に値上げしています。
あと忘れてはいけないのが“送料“。
これは工夫次第でかなり抑えることが出来ます。
わたしの場合はその抑えた部分はお客さんに還元するようにしています。
”送料+梱包代”の料金はかかったままをいただくスタイル。
クロネコメンバーズなどを利用して出来る限り送料を下げる努力をしています。
送料に関しては住んでいる地域と送る地域で料金が異なります。
流石に全国一律料金には出来ませんが、全ての地域を60サイズ料金でいただくようにしています。
わたしの住んでいる地域はほぼ日本の真ん中。東海地方です。
クロネコヤマトでは配送地域はこんな風に区切られています。
- 関東ー関西エリア
- 南東北、中国エリア
- 北東北、四国、九州エリア
- 沖縄
- 北海道
順に値段が上がっていき、本州でも送料は変わります。
実は沖縄よりも北海道のが高い。
北海道はヤマトの送料の割引をどれだけ頑張って駆使しても1200円はかかります。
わざわざその金額を出してまで選んで下さる。
だからサイズが大きくなっても60サイズ料金。
わたしの出来る精一杯の感謝です。※送料については今後記事にする予定。
他に佐川急便やゆうパックもあります。
発送するのに近い会社を選ぶのか、料金重視なのかを考えて選びましょう。
こんな感じで店舗でも出店でもない部分で割とお金がかかってきます。
なのである程度の個数の発送がないと正直なかなか利益が出ません。
その辺りは店舗や出店で補うなど考える必要がありますね。
リスク管理をしておく
通販に限らず、日本に住んでいるということは災害リスクが必ずついてまわります。
こればかりはどうしようもありません。
それぞれのリスクについて考えておきましょう。
地震ならほぼ全てがストップします。
そもそもお店でも工房でも設備が壊れてしまったら何も出来ません。
ギリ設備がセーフでもガスなどのライフラインの確認が必要。
また高速道路などが破損すると物流にも影響が出てきます。
物流に影響が出るということは、商品の発送に影響が出るということ。
先日あった例を2つ挙げておきます。
最近ですが、発送直前に福島県で地震がありました。
現地のヤマトの営業所は特に影響はありませんでしたが、お客さんのお家では停電があったりと大きな影響があったとのこと。
早めに連絡をし、生活が整うまで発送を待つことに。
10日ほどで連絡を頂いたので、焼き上げて発送しました。
千葉県の台風の影響を受けたこともありました。
この時は停電の影響でお客さんと連絡が取れなかったためヤマトの営業所の状況をネットで確認したところ、「しばらくの間、クール便の受付不可」とのこと。
3日ほど経ち、お客さんと連絡が取れたのでキャンセル扱いにするかどうか確認したところ、待って欲しいということだったのでこちらも生活が整うまで待機しました。
この時は2週間ほど営業所の復旧まで時間がかかった記憶です。
こんな感じで通販は災害の影響を受けます。
ピンポイントな影響になることもあります。
通販ならではの物流のリスクは把握しておきましょう。
焦らず待機。
ずっと言われている大きな地震。
東海地方住みとしてはずーっと言われ続けて30年。
いつあるかは誰にも予測は出来ません。
自分の地域で大きな地震があり、その時に注文を受けていたらどうするかなど常に考えるようにしています。
同じくお店でも出店でも通販でもリスクはつきまといます。
まさかコロナでここまでイベント出店に影響が出るとは思っていませんでした。
不測の事態は受け入れて、出来ることを考えましょう。
なんとも無力で残念なことですが、いつ何が起きても対応出来るように考えておくことが最大の対策だなと思います。
今回のまとめ
今回は通販を始める前に知っておきたい「パン屋の通販という働き方」について解説しました。
ポイントをまとめておきましょう。
- 送料を負担してまで購入してくれるお客さんに響く個性を作る
- 発送までの期間をどう考えるか
- 必ずかかる手数料や消耗品について計算する
- 災害が起きたら発送連絡を早めに行い、柔軟に対応する
通販を始めて今年で3年となりました。
月に80−100件ほどの発送を行いますが、配送というのは人を介します。
だからわたしの手から離れた時に起こるトラブルもあります。
手違いでなぜか茨城行きのパンが沖縄を経由したこともあるし、これまた手違いで冷凍便のはずが常温便になっていて焼き直したこともある。
荷物のシールの貼り間違えで届くはずの荷物が逆になっていたことも。
人が関わる以上わたしでは防ぎきれないミスもあるけれど、まずは自分がミスしないように常日頃最新の注意を払っています。
そんな時、いつもありがたいのはお客さんの声。
皆さん本当に温かくて優しい。
顔が見えないからこそ、パンで伝える。
今後も誠心誠意、美味しいパンを焼いていきます。
今後通販のポイントもお伝えしていきますね。